メルマガ第67号(H30.10.15)

(2018年10月15日発行)毎月随時発行予定(記事、論文の引用は太文字で掲載しています。)  
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◆10月21日(日)15時から「ひろば親の会」を開催予定。多くの参加をお待ちしています!
◆日本語支援 学校手探り 朝日新聞 9/30
※学校での子どもたちへの対応がとてもわかりやすく書かれていたので、2ページ掲載します。
日本語教育を必要とする子どもたちが増えている。どのような支援が必要で、学校はどう対応しているのか。現状や課題を探った。
■先進地域では 能力に応じ指導、別室で個別学習も
 「日本語教育」と言っても、一人ひとりの子どもの事情は異なる。日本語が十分に理解できず、支援が必要な子どもが入学してきた場合、学校はまず状況を把握することから始める。
 浜松市教育委員会は入管法の改正で、1990年代に日系ブラジル人の子どもが急増して以来、先進的な取り組みを展開してきた。現在は担当者が通訳を交えて保護者らから家庭状況などを聞き取り、子どもの日本語能力をチェックしたうえで、レベルに応じた日本語教育を進めている。
 全く日本語ができない子どもはまず、生きていくために欠かせない「サバイバル日本語」から始まる。数字の数え方や「○○がいたい」といった体の不調の訴え方、「したじき」「つうがくろ」など、学校生活に欠かせない言葉などを集中的に学ぶ。一方、体育や音楽など、日本語が十分に分からなくても参加しやすい教科はクラスに加わり、学校になじむようにする。
 次のステップは、日本語の基礎指導だ。学級への在籍を基本にしながらも、国語や社会など、言語や文化背景が分からないと理解が難しい教科は、別室で「取り出し授業」として教える。外国語を話せる地域在住の支援者や教員らの力も使い、こうした担当者が学級に付き添う「入り込み授業」もある。取り出し授業が必要なくなっても、補習などで支援を続ける。
 入学時から日本語がある程度身についている子どもであれば、最初から学級で国語などを学ぶこともある。文部科学省が2015年に設けた、外国人児童生徒らの支援を話し合う有識者会議の座長を務めた佐藤郡衛・明治大特任教授(66)は「来日した時の年齢や家庭内言語、来日前の生活など、一人ひとりが異なる。単に『日本語を教えればいい』のではなく、きちんと学力をつけるため、その子にどういう学習が必要かを考えないといけない」と指摘する。
 文科省は「日本語指導」と呼んでおり、日本語力が十分でない子どもに、日本語と教科を統合して指導するためのカリキュラムを開発し、14年には、個別に行う日本語指導を「特別の教育課程」として正規の教育に位置づけた。だが、こうした子どもを支援するための、国の統一的な受け入れ態勢はなく、自治体の意識や財政事情によってまちまちだ。
 浜松市は90年代から手探りで支援を進め、全市的な環境が整ったのは今年度になってからだ。浜松市では各学校で基礎的な日本語が学べる態勢を取っているが、岐阜県可児市のように、拠点となる施設に子どもを集めて教える自治体もある。一方、支援態勢が一切なく、担任の先生が試行錯誤で教えている学校も少なくない。
 ■全国に4.4万人、10年で1.7倍 ネパール語やロシア語/在籍5人未満、75%
 文科省の調査によると、日本語指導が必要な子どもは2016年5月現在、全国の公立小中高校などに約4万4千人いる。10年前の1.7倍だが、担当者は「減る要因はなく、さらに増えると思う」と話す。近年は三つの傾向がある。一つは、日本国籍の子どもの増加。16年は9,612人で、10年前の2.5倍だった。両親の国際結婚などが理由で、主に外国で育った子どもが多いという。
二つ目は多様化だ。以前は母語が中国語やポルトガル語など比較的限られていたが、最近はネパール語やロシア語などを使う子どもが増え、日本で生まれ育った「第2世代」も学齢期に達している。大阪府教委の担当者は「日本語での日常会話に問題がなくても、学年が上がると、学習で必要とされる言語にハンディが出てくるケースもある」と言う。三つ目が「集住と散在」だ。文科省の16年度調査をみると、5都府県に全体の半分が住み、特定の地域に集中していた。同時に、日本語指導が必要な外国籍の児童生徒がいる7,020校のうち、「在籍が5人未満」の学校は5,291校と、約75%を占める。こうした子どもは今後も増えそうだ。法務省によると、在留外国人は今年6月末時点で約264万人と過去最多を記録した。少子高齢化が進むなか、外国人労働者も増えており、厚生労働省によると、昨年10月末時点で約128万人いた。5年間で約60万人増え、日本の就業者の50人に1人の割合に当たるという。
 ■入り口論ではない「移民政策」必要 川上郁雄・早大教授
 豪州は、1970年代から多文化主義を政策の基本に据え、移民の子どもたちを対象に「第二言語としての英語(ESL/English as a Second Language)」の教育に力を入れてきました。以前は、「子どもはほっといても言葉を覚える」という考えがありました。しかし、きちんと教えないと日常会話はできるようになっても、学力が伸びません。本人の将来の選択肢が狭まり、社会にとってもマイナスです。そこで、ESLが重視されるようになりました。米国やカナダなどでも同様です。豪州の場合は州によって多少違いますが、中学高校に入る際は公立の英語学校で集中的に学んでから、地域の学校に通います。ESLの専門教員は地域の学校にも配置されています。小学生は地域の学校に直接入りますが、やはりESL教員がいます。日本でも、「第二言語としての日本語能力」を判定するための「JSL(Japanese as a Second Language)バンドスケール」を開発しましたが、使いこなせる人材が足りません。専門の教員養成が課題です。外国にルーツがある人がこれだけ増えても、日本に「移民政策」がないのも問題です。「どういう在留資格を増やすか」という入り口論ではなく、多様な言語環境で生まれた子どもたちに自信を持たせ、どのように育てるのか、という政策が求められています。
 ■サポート充実へ、人手や多言語化課題 桜井敬子・浜松市教委外国人支援グループ長
 浜松市の公立小中学校に在籍し、日本語指導が必要と判断された児童生徒は今年5月時点で1,262人いました。この中には、日本国籍を持っている子ども177人も含まれます。
 浜松市は製造業の工場が多く、こうした職場で働く人の子どもが多いようです。外国の子が多い地域の学校では、必要に駆られて手探りで日本語教育が進められてきました。
 私が以前に日本語指導を担当した小学校では約300人の児童のうち、100近くが外国にルーツを持っていました。当時は市教委からの支援者の派遣もなく、担当の2人で全員の子どもを見なければなりませんでした。こうした経験を生かして支援を充実させ、今年度からは全市的なサポート態勢が整いました。指導で大切なのは、日本語を教えるだけではなく、子どもたちが自分たちで考え、学習や生活をしていく力を身につけることです。担当していた学校で、ブラジル出身で市の消防士として活躍している先輩に、ポルトガル語で子どもたちに話してもらった時、子どもたちの目の色が変わったのが印象的でした。色々な職業の選択があることが伝わったと思います。支援は今後も充実させたいですが、人手は限られています。このため、現在は日本語が全く話せない子どもたちの支援を優先しています。多言語化も課題です。市内の学校には26カ国の出身の子どもがおり、通訳が身近にいない言語も増えています。
◆ 編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 朝日新聞に衝撃的な記事が掲載。「ベトナム人、相次ぐ死 実習生ら 仕事・生活追い詰められ」2012年から今年2018年7月までに81柱の位牌が東京都内のある寺院に安置されている。詳細は次号に掲載する。どうであれ、悲しすぎる記事。実習生の身に何が?
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