新着 メルマガ 2016.9.15 第34号

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「まるがめにほんごひろば」メールマガジン             
~外国にルーツをもつ子どもたちとその保護者の学習支援等に向けて~ 
通算第34号(2016年9月15日発行)毎月1回月末及び随時発行予定(編集者加筆:太文字)  
バックナンバーはURL:http://marugame-kodomo-nihongo.net/merumaga.html で閲覧できます。  
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【1】今号のトピック
◆1万人超す「就学不明」共同通信社・早稲田大大学院非常勤講師 澤康臣(移住連情報誌2016.6)メルマガ第27号で、義務教育年齢で住民票がある全国の外国籍の子ども約10万人のうち少なくとも約1万人に関し、自治体が就学の有無を調査していないことが共同通信の調査でわかったことを掲載した。以下はその詳細である。
共同通信社の調査は、公立学校などに在籍していない外国籍の子どもについて、政令都市、県庁所在地、外国人人口が多い自治体計72を対象に行った。就学状況を全く調べていない自治体が41で、約57%に及ぶ。2010年国勢調査結果のうち、教育に関する「在学」「未就学」「卒業」の区分で、国籍別分類も合わせた抽出をすると、外国人全体の7~14歳のうち、理由のはっきりしない「未就学」は0.5%だった。日本人の5.5倍であり深刻だが、(中略)「在学」「未就学」「卒業」の全てを足した合計が、「総数」と合わないのである。総数には「不詳」を含むとあり、その割合は16%、数では12,800人にのぼる。日本人610人、0.01%未満だから、全く別世界といっていい。(実に1,600倍)「不詳」は回答が記入されないときに発生する。(中略)言葉の壁だけでなく、生活実態・時間の違いから、調査員が外国人市民にきちんと接触できないことが指摘された。不安定で弱い立場にあることが多い外国人市民たちは、より真摯に国勢調査とは何かを説明しなければ何らかの取り締まりにつながるおそれを抱かせ、協力から遠ざけてしまうのではないかという分析である。自治体による「就学未調査」の多さとあわせ、外国人の子どもたちが教育を受けるということの必要性が社会に共有されていないことを示しているといえるだろう。(中略)さらに、「住民登録を残しているが、すでに日本にいない子ども」が非常にたくさんいるというのが、自治体担当者も外国人支援者ももっている実感だと思われた。
ホームページで、私は、「小中学校に通っていない未就学児は、H27.1.1の住民基本台帳の外国人人口のうち義務教育年齢人口で推計すると、329人となり,小中学校在籍者数240人を引くと、89人がなんらかの事情で学校に行っていない。率にすると27%もの高率である。」と書いたが、実際には日本にいない子どももあり、未就学率はもう少し低いようだ。だとしても、自治体担当者はこれらのデータを得られないことを理由に、就学状況をろくに調査せず、結果として多くの未就学児を生み出しているとしたら、子どもたちを日本社会から排除していると言われても反論できないと思うのだが。
【2】研修会・講演会・論文情報
◆「多文化共生」は可能か 教育における挑戦 馬淵仁(編著)勁草書房(第5章要約)
○人を支える言語教育としての日本語教育
・外国人住民に対する支援を日本語教育に集中して行ってきたことの問題点
(中略)学校教育における多様な言語文化的背景を持つ子どもたちの教育に関して、在日の子どもたちへの「同化教育」が民族的差別と偏見を助長し、子どもの民族的アイデンティティの形成と保持を妨げてきたこと、(中略)母語教育の問題も不問にし、教育の理念や目標が不在のまま適応を課するものとなっていること。(中略)日本語は抑圧の言語であり、日本語だけをコミュニケーションの手段とする限り日本語を母語として使う日本人と外国語として使う外国人のパワーリレーションが固定化してしまう。
・地域日本語教育のあり方を問い直す多様な試み
(中略)同化要請として機能しない日本語教育の方法として、共生のための言語である「共生日本語」の構築を提案。「教える-教えられる」あるいは「ホスト-ゲスト」という関係性を排除し、日本語能力に規定されることなくその場において自ら主体的に活動することを保証しようとという意識を形にしようとする試みである。母語話者と非母語話者との力関係や場におけるふるまいを規定する力として働く「日本語」そのものを問題の本質としており、その解決として、ことば(日本語)からの解放、母語話者も所有権を主張できない「共生日本語」の創造と学びを提唱。
・母語の保持・継承が保障された社会
「互いの文化的違いを認め合う」とは、すべての人が言語を含む自文化の価値観によって生きる権利を社会の中に認められ、言語、文化の保持・継承していける社会制度が整えられるかの問題
(中略)日本社会において圧倒的な力を持ち、同化作用として働く可能性のある日本語を、共生社会を支える共生言語として機能させることは、(中略)外国人の母語の教育、母語の尊重が保障された社会を作ること。(次号に続く)
※「共生日本語」これまでの日本語教育の日本語を「正しい日本語」と呼び、そこには、歴史的問題(日本人化へのイデオロギー)、差異化の問題(日本人の日本語が外国人学習者の日本語より上位に置かれ、社会的な抑圧構造を生産)コミュニケーション阻害の問題(言いたいことを言えなく、ストレスを感じる)があるとし、共生日本語への移行を提唱。詳しくは次号で紹介
【3】新聞記事・行政機関の記者発表記事・その他情報提供
◆蓮舫代表代行の日本と台湾の「二重国籍」問題に関し、二重国籍について調べた。
法務省のHPでは、重国籍者の方は国籍の選択を呼び掛けており、「外国の国籍と日本の国籍を有する人(重国籍者)は,22歳に達するまでに(20歳に達した後に重国籍になった場合は,重国籍になった時から2年以内に),どちらかの国籍を選択する必要があります。選択しない場合は,日本の国籍を失うことがありますので注意してください。」とある。ただし、日本国籍を選択してもただちに他国の国籍を喪失するものではない点に注意が必要。昭和60年1月1日施行の国籍法改正後に、日本以外の国籍を取得した場合、期限までに国籍の選択をしなかったときには、法務大臣から国籍選択の催告を受け、場合によって日本国籍を失う可能性があるが、国籍選択の催告を受けた人はいままで存在しないようだ。国籍法の施行前から重国籍となっている日本国民は、昭和60年1月1日現在20歳未満の場合、22歳に達するまでの期限までに国籍の選択をしないときは,その期限が到来した時に日本の国籍の選択の宣言をしたものとみなされる。日本では、国籍法の改正まで父系血統主義が採られ、外国人父と日本人母の間に生まれた子には日本国籍が与えられなかったが、無国籍児が問題化して父母両系血統主義への改正が行われた。重国籍となる例としては,(1) 日本国民である母と父系血統主義を採る国(例えば、エジプト)の国籍を有する父との間に生まれた子 (2) 日本国民である父または母と父母両系血統主義を採る国(例えば、韓国)の国籍を有する母または父との間に生まれた子 (3) 日本国民である父または母(あるいは父母)の子として,生地主義を採る国(例えば、米国)で生まれた子 (4) 外国人(例えば、カナダ)父からの認知,外国人(例えば、イタリアとの養子縁組,外国人(例えば、イラン)との婚姻などによって外国の国籍を取得した日本国民 (5) 帰化または国籍取得の届出によって日本の国籍を取得した後も引き続き従前の外国の国籍を保有している がある。
ウイキペディアによれば、国際法では、「人は必ず唯一の国籍を持つべき」とする国籍単一の原則または国籍唯一の原則が基本原則である。他方、国籍自由の原則という考えもあるが、これは国籍の変更の自由などを意味し、多重国籍の自由を意味しないとある。国籍取得の形式には、血統主義と出生地主義がある。血統主義とは、親のどちらかの国籍が子の国籍となる方式で、日本、中国、大韓民国、イタリア、ノルウェー、フィンランドなどがある。原則として血統主義であるが出生地主義を認める例外規定を設けている国にはイギリス、オーストラリア、オランダ、ドイツ、フランス、ロシアなどがある。出生地主義とは、本人が生まれた時点での出生地に国籍を付与する方式である。かつてヨーロッパ諸国も血統主義が一般的であったが、アメリカ独立、フランス革命を経て出生地主義が一部の国で採用されるようになった。出生地主義の国には、アルゼンチン、カナダ、アメリカ合衆国、ブラジルなどがある。なお、ブラジルでは、国籍の放棄はできるが、厳しい手続きが必要なため、手続きなしに他の国に帰化すると、当然二重国籍になる。
【4】自由書き込み欄(このメールマガジンへの注文、ご意見をお寄せください。 
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【5】編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  めっきり秋の始まりを予感させる今日この頃、読者の皆さんはいかがお過ごしで しょうか。
  外国にルーツをもつ子どもたちの教育問題は喫緊の課題です。中でも、中学校に 入学した、それぞれの子どもたちの学習が進んでいるかどうか、心配です。当ひろ ばでも、中学生への受け入れを積極的にすべきでないかと意見もあり、今後検討し ていきたいと思っています。
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