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◆外国につながる子どもの学力保障 佐藤郡衛(東京外大特任研究員・東京学芸大学国際教育センター教授)外国につながる子どもには、学力を「学校の知識習得度」という狭義に捉えるのではなく、地域やボランティアが行っている学習支援の意味を捉え直す必要がある。○地域における多様な回路による学習支援①興味関心を引き出し、学習意欲を喚起させるような支援②学習能力をつけるための支援③言語能力の育成を目指した支援④他者との関わりを通して学習を展開し、「学力」の向上につなげていくような支援⑤現在の自分を再構成できるようにすることで「学力」の向上につなげていくような支援○多様な回路による学習支援は、学校だけでなく、地域の多様な支援によって成立→協働・関係機関・組織が固有の役割を担うことで、生徒の総体としての「学力」を向上○行政、学校、NPOの実質的な連携 「公的コミュニケーションの場の設定」と「対等な規範形成」の必要性・子どもの情報の共有化(子どもの個別ファイルづくり)○こうした試みは、「教育コミュニティ」と呼んでいる。学校と地域が協働して子どもの発達や教育を考え、具体的な活動を展開していく仕組みや運動である。※子どもたちは、進路の選択肢が狭く、将来の方向性を見出せないことが多い。子どもたちにとって、学力とは、社会関係を豊かにし、自分の居場所を見いだし、さらに自分を表現できる方法や場を見いだすこと、それが自律的な力につながる。この自律的な力こそが、「学力」にほかならないと佐藤郡衛教授は言う。http://www.tufs.ac.jp/blog/ts/g/cemmer/No09%2042-52.pdf

◆二つの言語と文化の中で育つ子ども達への支援 富山国際大学教授 福島美枝子(2014.3)福島教授は、2014年4月から外国籍児童生徒などに対し「特別な教育課程」が提供される状況下において、受け入れる日本人側が二つの言語と文化の中で育つ子ども達の言語発達をより良く理解し、日本語教育や教科教育を超えて日本人社会全体が少数言語の人々への関心や生産的な考え方を発展させていく必要があるという。※論文中の個人的メモカミンズ博士の「発達上の二言語相互依存の仮設」でいうビックス(生活言語)とカルプ(学習言語)のうち、カルプは場面支援度と認知力必要度を軸にして、言語活動を4つの領域に分けて考えられている。領域Aは買い物をする場面での言語活動など、場面の助けがあり高度の認知度を必要としない活動、領域Bは理科の実験とか視覚教材活用の教科授業など、場面の助けはあるが認知力の必要度が高い活動、領域Cは教師の板書を写すとか買い物リストを作るなど、場面の助けがないが認知力の必要度が低い活動、領域Dは教科学習の多くがこの領域に入り(本を読む、レポートを書く、口頭発表をするなど)、場面の助けがなく認知力の必要度が高い活動である。○「発達上の二言語相互依存の仮設」(母語の発達は第二言語の発達を、第二言語の発達は母語の発達を促すという相互作用が認められる。):入国する前に母語でのカルプをより身につけている(3~4年生ぐらい)方が、第二言語のカルプの伸びも良い。○「日本語が身についていない子ども」としてでなく、子どもがすでに持っている知識や能力を知る必要がある。・・・・教育実践面で子どもたちのために必要なのは、ひとりひとりの背景を知り、定期的に言語面と教科学習面での伸びを見ながら今後の目標を考案すること。・・・子どもたちへの支援は、言語発達や教科学習面だけでなく、もっと情意的な面での成長や人々と関わって生きていく面にも注目しなければならない。http://www.tuins.ac.jp/library/pdf/2014kodomo-PDF/2014-13fukushima.pdf