(2018年9月30日発行)毎月随時発行予定(記事、論文の引用は太文字で掲載しています。)
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当ひろばでは、10月21日(日)午後に丸亀市城乾コミセンで「子どもたちの家族との懇談会」を予定しているが、この懇談での話題にとても適した論文がネットで見つかったので紹介する。
◆外国人児童生徒の学習支援における家族の協力と課題
松浦 康世(日本大学国際関係学部国際総合政策学科 助教)
https://www.ir.nihon-u.ac.jp/pdf/research/publication/04_39_04.pdf
この論文は、ボランティア支援者と日系外国人大学生への聴き取り調査によって分析されたものだが、「児童生徒に見られる学習意欲や学力低下のみならず、不登校や非行のような深刻な問題まであるが、程度の違いはあっても、どの問題も日本語力不足と親の無関心に起因していることが共通している。」とあり、その二つの原因について考察している。以下、一部要約。
(家族の協力)外国人児童生徒が健全に成長するためには、第一に言葉の壁を乗り越えなければならない。一見する と不自由なく会話ができるような生徒でも、実はその壁があるために学習や学校の指示についていけなくなっている場合が多い。ボランティア支援者たちは、全体授業を担当する教師や忙しい親たちでは見落としがちな児童生徒一人一人の問題を見つけ出し、様々な工夫や努力により問題解決にあたる役割を担っている。しかし、学習指導における様々な努力があっても、その支援には限界がある。今回調査した3人
のボランティア支援者の意見に共通していたのは、親の関与が最も大きな影響を与えるということだった。ある支援者は、「親や家族が十分に児童生徒の学習に関われない状況にあるとき、学力低下から始まる様々な問題として現れ、それは子どもたちからの
SOS 信号である」と語っていた。一方、学習支援者の立場からすれば親の無関心だと思われていたことも、大学生が語った体験談を聞くと、親は決して無関心ではない場合もあることが明らかとなった。自分の日本語力が低いことに引け目を感じ、子どもに注意したくても強く言うことができない場合がある。また、支援者の活動事例の中に見られるように、経済的な理由で仕事が忙しくて子どもの世話ができないという場合も、単純に親を責めることはできない。それらのケースを見ると、子どもの救済と同時に、あるいはそれ以上に親の救済が必要である。どうすれば親子が安心して安定した生活を送れるのか、問題の根本的な原因をつきとめ、解決するための支援策を考えていかなければならない。(地域住民の協力)経済的な問題については、第一に行政の力を借りる必要があると思われるが、親のメンタル面のケアなどについては、地域住民の協力が大きな力となる。日本語が不十分で子どもを叱ることができないような親の場合も同じである。どちらも日本語の運用能力の低さから、地域住民とのコミュニケーションがとれず、地域の中で孤立してしまっている可能性がある。そのような親たちが地域と関わりを持ち、楽しく安心して生活できるようになるためには、地域
住民の積極的な働きかけと配慮が必要である。実際、この調査に協力してくれた支援者たちはボランティア団体に所属し、日ごろから日本語支援やその他様々な行事や活動を通して、日本に在住する外国人との交流を続けている。それらの活動は、外国人に対する日本語学習の補助や日本文化の紹介といった一方的な働きかけだけではなく、地域住民に対して異文化理解を促し、国籍に関係なく協働してコミュニティーを作っていくための働きかけを同時に行うものである。地域住民が、在日外国人の言葉の壁を理解した上で、常に声掛けをして、必要な手助けをすることにより、外国人がその地域に溶け込み、安定した生活が送れるようになる。このような活動が自治体や任意団体によって継続されることにより、異文化理解や多文化共生の意識がその地域に根付いていく。
(支援の連携)活動事例の中には、問題解決にあたり、親や家族だけでなく、学校の教師や学習指導員の他、場合によっては行政機関や相談機関などとも連携をとるケースも見られた。それはボランティアだけの力では
親にコンタクトを取ることが難しい場合である。支援者の立場では家庭の問題に踏み入る権利がないか らである。支援者は、事態の深刻さから必要に迫られ、関係者や関係各所に連絡を取る方法を模索するようになる。ボランティア支援者の存在は、児童生
徒を孤立させず、それら関係者や関係機関と結びつける役割を果たしているのである。しかし、このように支援者が一人で、学校、親、行政、相談所などと連絡を取り、問題解決のためのコーディネイトをするのでは荷が重すぎる。関係者、関係各所がそれ
ぞれの役割を果たすことは大切であるが、行政があらかじめ連携するための体制を整え、支援者の存在を把握し、いざというときに連携のための指示を与えるといったリーダーシップの取り方が最も効率が良いと思われる。今後、行政において、子どもたちを孤立させないような支援の連携を、関係者、関係各所とともに検討していくことが望まれる。(紙面の都合でまとめだけを掲載、ぜひ原文で。)
◆平成29年の「在留資格取消件数」について(法務省9月28日プレスリリース)
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00175.html
※法務省が在留資格の取消しの内訳を公表したのは初めて。
1)平成29年の在留資格取消件数は385件。これは平成28年の294件と比べると31.0%の増加,平成27年の306件と比べると25.8%の増加2)在留資格別にみると,「留学」が172件(44.7%)と最も多く,次いで,「日本人の配偶者等」が67件(17.4%),「技術・人文知識・国際業務」が66件(17.1%)3)出入国管理及び難民認定法第22条の4第1項各号の取消事由別にみると,第6号が172件(44.7%)と最も多く,次いで,第2号が66件(17.1%),第3号が52件(13.5%)、第5号が25件(6.5%)。
※第6号:在留資格に応じた活動を3カ月(高度専門職は6カ月)以上行わない。第2号:偽りその他不正の手段で上陸許可を受けた。(例・在留資格「日本人の配偶者等」を得るために,日本人との婚姻を偽装して,不実の婚姻事実が記載された戸籍謄本等を提出した上,在留期間更新許可を受けた。・
在留資格「技術・人文知識・国際業務」の活動に当たらない業務に従事する予定であったにもかかわらず,偽りの職務内容をもって申請を行い,当該在留資格への変更許可を受けた など。)第3号:不実の記載のある文書又は図画の提出又は提示
により,上陸許可等を受けた。(・ 取消対象者を採用する予定のない会社を勤務先として記載した申請書を提出し,在留 資格「技術・人文知識・国際業務」への在留資格変更許可を受けた。・在留資格「技術・人文知識・国際業務」で在留する夫が実際には就労していない会社の在職証明書を提出することにより,当該夫の扶養を受けることを目的とした妻
(取消対象者)が在留資格「家族滞在」の在留資格認定証明書の交付を受けた など)第5号:在留資格に応じた活動を行っておらず, かつ,他の活動を行い又は行おうとして在留している。(留学生が学校を除籍された後に,アルバイト又は犯罪行為(詐欺・窃盗等)を行って在留していた。・
技能実習生が実習実施先から失踪後に,他の会社で稼働して在留していた。・ 在留資格「特定活動(外国人建設就労者)」をもって在留する者が,受入機関から失踪し,他の会社で稼働していた など)
4)国籍・地域別にみると,ベトナムが179件(46.5%)と最も多く,次いで,中国が84件(21.8%),フィリピンが30件(7.8%)
◆ 編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
上記論文の中で「(学習支援を行うボランティアなどの活動は)地域住民に対して異文化理解を促し、国籍に関係なく協働してコミュニティーを作っていくための働きかけを同時に行うものである。地域住民が在日外国人の言葉の壁を理解した上で、常に声掛けをして、必要な手助けをすることにより、外国人がその地域に溶け込み、安定した生活が送れるようになる。このような活動か継続されることにより、異文化理解や多文化共生の意識がその地域に根付いていく。」とあり、我々子どもたちの学習支援活動をする者にとっては、非常に心強く感じられた。
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