メルマガ アーカイブ(JSL対話型アセスメント DLA)2014.3

◆外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント(DLA)http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003/1345413.htm

文部科学省が、日本語能力測定方法「DLA~外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント」を開発したことは、1月のメルマガの「特別の教育課程」による日本語指導の中でご紹介しました。このたび、その内容の詳細が公表されました。○対話型アセスメント(DLA)のねらい・日常会話はできるが、教科学習に困難を感じている児童生徒を対象・子どもたちの言語能力を把握すると同時に、どのような支援が必要であるか、教科学習支援のあり方を検討するためのもの○測定する言語能力について(会話の流暢度、弁別的言語能力、教科学習言語能力)①会話の流暢度(CF:Conversational Fluency)日常的な学校生活に必要な会話力 第二言語学習者は1~2年必要②弁別的言語能力(DLS:Discrete Language Skills)個々の技能(音韻意識、フォニックス、文字認識、単文形成力、語彙、文法構造)によって習得に必要な時間が異なる。音韻意識、フォニックス、文字認識、単文形成力は就学後2年ぐらいで獲得可能・音韻意識:単語が弁別可能な音で成り立っているという認識・フォニックス:音と文字との関係についての認識、文字を読み取る力・文字認識・単文形成力:大文字や句読点に関する規則、スペリング、文法)③教科学習言語能力(ALP:Academic Language Proficiency)学年相当レベルに達するのに5年以上必要○DLAの特徴・対話型を基本・指導者と子どもたちが一対一で向き合うことで、日頃の学習成果を、そして今後の支援活動で必要となる学習内容や学習領域を絞り込んでいく上で必要な情報が得られること。対話型のDLAは、年齢相応の言語能力を持たない子どもの教科学習言語能力評価法として妥当性がある。○DLAによる言語能力の測定「導入会話」、「語彙力チェック」、4つの言語技能(話す、読む、書く、聴く)から構成

メルマガ アーカイブ(論文)

◆外国につながる子どもの学力保障 佐藤郡衛(東京外大特任研究員・東京学芸大学国際教育センター教授)外国につながる子どもには、学力を「学校の知識習得度」という狭義に捉えるのではなく、地域やボランティアが行っている学習支援の意味を捉え直す必要がある。○地域における多様な回路による学習支援①興味関心を引き出し、学習意欲を喚起させるような支援②学習能力をつけるための支援③言語能力の育成を目指した支援④他者との関わりを通して学習を展開し、「学力」の向上につなげていくような支援⑤現在の自分を再構成できるようにすることで「学力」の向上につなげていくような支援○多様な回路による学習支援は、学校だけでなく、地域の多様な支援によって成立→協働・関係機関・組織が固有の役割を担うことで、生徒の総体としての「学力」を向上○行政、学校、NPOの実質的な連携 「公的コミュニケーションの場の設定」と「対等な規範形成」の必要性・子どもの情報の共有化(子どもの個別ファイルづくり)○こうした試みは、「教育コミュニティ」と呼んでいる。学校と地域が協働して子どもの発達や教育を考え、具体的な活動を展開していく仕組みや運動である。※子どもたちは、進路の選択肢が狭く、将来の方向性を見出せないことが多い。子どもたちにとって、学力とは、社会関係を豊かにし、自分の居場所を見いだし、さらに自分を表現できる方法や場を見いだすこと、それが自律的な力につながる。この自律的な力こそが、「学力」にほかならないと佐藤郡衛教授は言う。http://www.tufs.ac.jp/blog/ts/g/cemmer/No09%2042-52.pdf

◆二つの言語と文化の中で育つ子ども達への支援 富山国際大学教授 福島美枝子(2014.3)福島教授は、2014年4月から外国籍児童生徒などに対し「特別な教育課程」が提供される状況下において、受け入れる日本人側が二つの言語と文化の中で育つ子ども達の言語発達をより良く理解し、日本語教育や教科教育を超えて日本人社会全体が少数言語の人々への関心や生産的な考え方を発展させていく必要があるという。※論文中の個人的メモカミンズ博士の「発達上の二言語相互依存の仮設」でいうビックス(生活言語)とカルプ(学習言語)のうち、カルプは場面支援度と認知力必要度を軸にして、言語活動を4つの領域に分けて考えられている。領域Aは買い物をする場面での言語活動など、場面の助けがあり高度の認知度を必要としない活動、領域Bは理科の実験とか視覚教材活用の教科授業など、場面の助けはあるが認知力の必要度が高い活動、領域Cは教師の板書を写すとか買い物リストを作るなど、場面の助けがないが認知力の必要度が低い活動、領域Dは教科学習の多くがこの領域に入り(本を読む、レポートを書く、口頭発表をするなど)、場面の助けがなく認知力の必要度が高い活動である。○「発達上の二言語相互依存の仮設」(母語の発達は第二言語の発達を、第二言語の発達は母語の発達を促すという相互作用が認められる。):入国する前に母語でのカルプをより身につけている(3~4年生ぐらい)方が、第二言語のカルプの伸びも良い。○「日本語が身についていない子ども」としてでなく、子どもがすでに持っている知識や能力を知る必要がある。・・・・教育実践面で子どもたちのために必要なのは、ひとりひとりの背景を知り、定期的に言語面と教科学習面での伸びを見ながら今後の目標を考案すること。・・・子どもたちへの支援は、言語発達や教科学習面だけでなく、もっと情意的な面での成長や人々と関わって生きていく面にも注目しなければならない。

http://www.tuins.ac.jp/library/pdf/2014kodomo-PDF/2014-13fukushima.pdf

メルマガ アーカイブ(日本語指導研修)2014.3

◆発達障害の理解と支援のあり方  東京学芸大学 教育実践研究センター 大伴 潔第13回外国人児童生徒教育フォーラム(2012年)「JSL児童生徒の学習上のつまずきと支援」抜粋要約・発達障害の定義:生まれつき脳の働きが定型発達児とは異なり、独特の行動特性を持っている状態自閉症、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、アスペルガー症候群などで、しつけや環境が原因ではない。行政上の発達障害と学術上の発達障害は一致しない。前者は、知的障害や脳性マヒは含まれない。・自閉症:明確な定義はない。現在、合意形成されている3つの特徴①対人関係における困難:相手の気持ちを察するといった共感的な関係の困難、視線を合わせることが難しいなど(視線をしっかり向けてくる子どももいるので、絶対的なものとして判断しないこと。)②言葉の発達の遅れや独特の表現:質問の言葉をオーム返しする、パターン化された言葉で会話を始めるなど③限定された興味や活動の範囲:同じ遊びや物(衣類等)、パターン的行動(活動の手順等)、特定の感覚刺激などへのこだわり、変化に対応しにくい。・自閉症スペクトラム:知的障害を伴い話言葉のない自閉症~高機能自閉症(知的発達の遅れない)・アスペルガー症候群(知的発達の遅れない・言葉の発達の遅れない)までの連続体(境界がない)・アスペルガー症候群の子どもの特徴①人の気持ちや「場の雰囲気」「暗黙のルール」が読みとれない。②ことばを字義どおりに受け取ってしまう。③妙に堅いことばを使ったり、一方的に話したりする。④こだわりが強かったり、感覚が過敏であったりする。⑤得意と不得意の差が大きい。・注意欠陥・多動性障害(ADHD)①年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力及び又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもの。②7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。・学習障害(LD)①基本的には、知的発達に遅れはないものの、読む・書く・計算するなどの能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す状態を指す。②中枢神経系の何らかの機能障害が原因と推定されるが、視覚・聴覚障害などの器質的な障害や環境的要因が直接の原因となるものではない。【5】新聞記事・行政機関の記者発表記事◆日本語パートナーズ派遣事業http://www.jpf.go.jp/j/ac/index.html国際交流基金アジアセンターが、ASEAN諸国の教育機関で日本語を教える教師やその生徒のパートナーとして一定期間、日本から派遣する事業。派遣先は主に中等教育機関、日本で言うと高校。授業のアシスタントをしたり、日本文化を紹介したり。また、授業以外でも多くの交流を行う。(応募要件) (1) 事業の趣旨を理解し、日本とASEAN諸国との架け橋となる志をもった方 (2) 満20歳から満69歳(2014年11月1日時点)で、日本国籍を有し、日本語母語話者である方 (3) 日常英会話ができる方 (4) 国際交流基金が別途指定する派遣前研修全日程に参加できる方 ア. 日程:8月3日(日曜日)~8月30日(土曜日)イ. 場所:国際交流基金関西国際センター(大阪府泉南郡)(5) SNS、ウェブサイト等を活用して本プログラムの広報や活動についての情報発信に協力できる方 (6) 心身ともに健康な方 (派遣先の内定等) (1) 応募用紙に希望する派遣国を記入する。(フィリピンは派遣期間も記入)なお、派遣国内の都市、派遣機関については、選ぶことはできない。 (2) できるだけ希望を考慮して派遣するよう調整するが、希望通りとならない場合がある。 (3) 特に高度な日本語教育活動支援が期待される配置先の場合、以下の一定の能力・経験を有する方が優先して配置される場合がある。 • 日本語教育主専攻・副専攻中の学生 • 日本語教育主専攻・副専攻修了者 • 日本語教師養成講座在籍者および修了者• 日本語教育能力検定試験合格者(4) 派遣先の状況によっては、以下の能力・経験を有する方を優先して配置される場合がある。 • 現地語が出来る方 • 仕事による駐在経験、もしくは留学による滞在経験がある方◆海外の優秀な人材確保へ入管法改正案政府は、日本で3年間活動した外国人を対象に、日本での在留期間を無期限とする新たな在留資格を与えることを内容とする入管法改正案を決定した。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140311/k10015879241000.html

メルマガ アーカイブ(日本語指導 特別の教育課程)2014.1

◆日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施について  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄平成26年4月1日施行 学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(通知)http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003/1341903.htm「特別の教育課程」による日本語指導(1)指導の内容:外国人児童生徒が学校教育において各教科その他の教育活動に、日本語で参加できることを目的とする指導(学校生活を送るために必要な日本語指導も含む。)在籍学級の教育課程の一部の時間に替えて、在籍学級以外の教室等で行う教育の形態(2)対象とする児童生徒:小学校、中学校、中等教育学校の前期課程、特別支援学校の小学部及び中学部に在籍する日本語指導が必要な児童生徒指導の要否は校長の責任の下で行うが、判断には、日本語指導担当教員をはじめ担任や各教科を担当する教員、日本語指導補助者など複数人により、児童生徒の実態を日本語能力、学校生活への適応状況も含めた生活・学習の状況、学習への姿勢・態度等の多面的な観点から把握・測定した結果を参考とする。(文部科学省では、日本語能力測定方法「DLA~外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント」を開発した。これまで各地域で工夫されてきた方法とあわせて、本アセスメントを活用してほしい。)(3)指導者 日本語指導担当教員:教員免許を有する教員(常勤・非常勤講師含む。)日本語指導補助者(必置ではない。):日本語指導担当教員が行う日本語指導や教科指導等の補助を行う支援者、児童生徒の母語による支援者(4)授業時数:年間10単位時間から280単位時間までを標準とする。・1単位時間:45分又は50分 (5)指導の形態及び場所:在籍学校における「取り出し指導」を原則とする。ただし、指導者の確保が困難な場合には、他校における指導も認める。やむを得ない事情がある場合には、一定の要件の下、例外的に学校外施設における指導も認める。(6)指導計画の作成及び学習評価の実施①指導計画の作成・学校から教育員会への指導計画(特別の教育課程の編成・実施計画)の届け出・学校内で作成する個別の指導計画の作成②学習評価の実施○期待される効果:・児童生徒一人一人の実態に応じたきめ細かな指導の実現・指導を受けた児童生徒が各教科その他の教育活動に日本語で参加できるようになること。・地域や学校において日本語指導に携わる関係者の意識の啓発及び指導力の向上※今年の春から実施するとの情報であるが、学校現場での現実感は乏しいようだ。香川県のような1校当たりの対象児童生徒が少ない地域では、1人の指導者が複数校を巡回して指導を行うことや、児童生徒にとって通いやすい学校等に指導する教室を置くことも考えるようだ。

メルマガ アーカイブ(日本語指導研修)2014.2

◆地域日本語教室支援事業を実施しました。(香川にほんごネット共催)とき 平成26年2月11日(火・祝)ところ アイパル香川3階第5・6会議室対象 県内各地域の日本語教室日本語指導ボランティア、一般県民講師:RINK(すべての外国人労働者とその家族の人権をまもる関西ネットワーク)草加道常氏内容要旨 「外国籍住民の現状と生活相談について~日本語支援に関わる諸問題~」(1)新来外国人の変化と外国籍住民の現状外国籍住民の3つの壁(ことばの壁・制度の壁・こころの壁)←外国人への無関心①来日外国人の変化・1970s ニューカマーの外国人が増加し始める。 ・1970s後半 ベトナム難民の来日と東南アジアの女性労働者の増加・1980s 南アジア・西アジアの男性労働者の増加・1990s以降 南米日系人を中心に増加・1994以降 中国残留日本人急増・1993 外国人研修・技能実習生制度の導入・2008年のリーマンショク 大量の外国人が帰国※リーマンショクで派遣会社が倒産したことで、これまで通訳が生活面の大部分の面倒をみていたのができなくなり、外国人個々人が日本の実生活に放り出されたことで、「顔の見える定住化」に変化していった。②来日経緯と在留資格・在日コリアン、在日中国人(特別永住者)・中国残留日本人、日系南米・フィリピン人(日本人の配偶者等、定住者)・日本人との国際結婚(日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)・難民(定住者、特定活動)・就労(人文知識・国際結婚、技術、技能、企業内転勤、教育、興行)・留学生(留学)・技能実習生(技能実習1号・2号のイ、ロ)※1号:入国1年目 2号:入国2.3年目 イ:企業単独型 ロ:団体管理型 ③外国人相談の特徴と内容・2012年度NGO内容別相談比率では、在留資格が26%、家族関係(結婚、離婚、出生、認知など)が24%で全体の半数を占める。・外国人への社会保障制度の適用1986年の国民健康保険法を最後にすべて国籍条項廃止したが、これがすべて適用になるのは、永住者、永住者の配偶者等、日本人の配偶者等、定住者に限られる。特に、非正規滞在者は、国民健康保険、健康保険、生活保護、児童手当などは適用されない。

◆おおさかこども多文化センター主催「外国にルーツをもつ子どもの学習上のつまずきと支援のあり方」学習会(2月23日(日)13:30~16:00 大阪市総合生涯学習センター6階 研修室)講師:近田由紀子氏(こんだゆきこ)大阪大学大学院連合小児発達学研究科)浜松市で長年、小学校教員として外国人児童教育に携わり、現在は大学院で外国人の子どもの発達について研究されている。内容:学習活動に困難さを抱えているJSL児童の要因は、「ことば」なのか、「文化」なのか、「発達」の問題なのか、その見立ては難しい。多様な要因が複雑に影響しており、支援の手がかりをつかむには、多角的な、長期的な視点が必要である。事例を挙げながら、子ども自身の多様性、受入れ側の多様性とその対応を学んだ。何ができて何ができないのか、具体的な場面、事柄を探し、できることを伸ばしつつ、苦手なことを引き上げていく。関係者が子どもの情報を共有し、それぞれのかかわり方、場の環境、指導内容によって、子どもの表れは変わる。グループワークでは、3つの子どものタイプから選択又はグループ独自のタイプを決め、子どもの困り感はどこにあるのか、支援できる人材と場をどう確保するのか、支援の具体策はどのようなものかなどを話し合った。(感想)講師の話の中で、「この子だったら何から始めたらいいのか、できていないところを伸ばすより、できるところを伸ばす方がスムーズにでき、子どももより達成感を感じる。同時にできるところの周辺部分も高まると言う。脳の血流が上がり、シナプスが活性化し、その周辺部も活性化する。」との話はとても印象的であった。※研修会の資料がご希望の方は、メールしてください。お送りします。

◆「移動する子どもたちと日本語教育」早稲田大学大学院日本語教育科教授 川上郁雄※上記書籍に、平成25年1月20日(日)東広島市市民文化センターでの年少者日本語教育指導者のための出前講演会での川上先生の講演要旨を加筆しました。1.「移動する時代」と子どもたち国際移民の時代:大量の大人たちが自分の意思で移動するのに対し、大量の子どもたちは、大人たちによって「移動させられる」時代・ドイツ ドレスデン市のインターナショナル校の事例教室の壁に、子どもたちがこの学校に編入するまでの数カ国の移動の軌跡を表で貼付子どもたち同士がそれぞれの背景を知ることで、自分の移動の生活を特別視しない。子どもが抱えさせられる課題・複数言語環境で成長する子どもことばの教育がなぜ必要なのか。→複数言語で他者とつながっている複数言語で向き合う自己の確立2.指導の前提(1)子どものことばの生活を想像する。→言語生活を子どもの目線で考える。(2)子どもの成長と発達を考える。→子どもはさまざまなストレスや思いを抱えている。(3)子どもの心を支える→ 教育はそんな子どもの心を支えるもの 3.ことばの力はどのように見えるかその背景に何があると思いますか。「黙っている子」→日本語が話せない。サイレントチルドレン(沈黙期間 他の子を観察、わかるまで黙っている。)自信がない「人のまねをする子」→自分の意見に自信がない。わからないまままねをする。「自分でことばを作る子 例~じゃない」→じゃない は否定形 NOの意味「1語文の子」→日本語学習初期の段階 「はい」というがいろいろな意味のはいがある。「もともと学力が低いように見える子」→個の力、その子の問題とみなしがち「ほとんどの話は理解できるが、日本の文化に関する知識が不足している子」→日本の何年のいながら、日本の昔話での文化的な事柄がわからない子どもたちのことばの力の実状は極めて多様である。子どもは、人とのやりとりの中で(相互作用的)、その子の背景や発達段階などに応じ変化(動態的)する。これらは、JSLバンドスケールのどれかのレベルと合うかを検討できる。「※ことばの力:他者とやりとりする力、学び考える力、思考を深める力を得ることことばの力を育成するために重要なことは?①子どもたちに日本語を教える方法②目の前の課題をやりとげるための支援③子どもたちの成長・発達の過程に継続的に、かつ長期的に寄り添って日本語を教える。④教授法、教材開発それだけでは十分ではない。1.子どもたちがいかに自律的に、かつ主体的にことばを学ぶ力を獲得していけるか。生きていく主体である子ども自身が自らの学びのスタイルを見つけ、自律的に、かつ主体的に学んでいくように、支援者がいかに支援するか。一人ひとりの子どもに寄り添って共に考えていくにはどのようにしたらいいのか。」4.「日本語指導が必要な児童生徒」とは誰か・誰が何をもって判断するのか。教委に報告する日本語指導が必要な児童生徒の判断は、学校が決める。予算の関係で、制約されることもある。・文科省の新たな定義(H18.11.6)①日本語で日常生活が十分できない者(JSLバンドスケール レベル1~2に相当)②日常会話ができても、学年相当の学習言語が不足し学習活動への参加に支障が生じる者で、日本語指導が必要な者(JSLバンドスケール レベル3~4に相当)しかし、JSLバンドスケール レベル5~6でも支援が必要である。                   ・2言語相互依存の仮設(J.カミング)            2重の氷山 2言語が上のしきいを越えれば「加算的バイリンガル」(母語に加えて社会的に有用な言語が加わる)になる。第一言語による認知的、社会文化的背景が日本語の力に影響を与える。JSLバンドスケールは、レベルを決定することに意味はない。複数の支援者の見立てが大事「※JSLバンドスケールに見る「ことばの力の捉え方」子どもの日本語の力の実態を発達段階的に把握するものさし(scales)の束(band)年齢集団を「小学校低学年」「小学校中高年」「中学・高校」の3つに分け、それぞれの集団の4技能(聞く、話す、読む、書く)ごとに、初歩レベルの1から日本語を高度に使用できるレベルの7あるいは8の段階に設定している。日本語を学ぶ子どもの学習の様子や先生とのやりとり、クラス活動や遊びの様子を観察し、そこで見られる言語使用の特徴がどのレベルの特徴と合うのかを検討する。取り出し指導の子ども:レベル1からレベル6まである。ひとりの子どもでも4技能が同じレベルにはなく、アンバランスな状態にある。子ども一人ひとりによって、来日年齢、滞在期間、出身国での教育、家庭内の言語生活などさまざまな異なる事情がある。バンドスケールは、子どもたちのことばの力を把握しつつ、そのことばの力を伸長するために、どのような日本語教育を行うかを検討することが目的なのである。」・日常会話能力(生活場面)1~2年で獲得文脈が見える。話題がわかる。相手が聞いてくれる。知っている語彙が少ない。・学習言語能力(学習場面)5~7年で獲得文脈が見えない。馴染みのない話題。抽象度が高くなる。知らない語彙が多い。5.「日本語指導」から「ことばに留意した教育」の創造へ・三重県鈴鹿市の試み人口20万人 小中学校 40校 外国にルーツをもつ児童生徒 700名(全体の1割)5年間JSLバンドスケールを使って、実践研修会(教師間での学習)・共有(教師間で個々の児童生徒の状況共有)・連携(国際学級と在籍クラス)6.言語活動に必要な観点は何か・個別化:子どもを主人公にする。個人差(言語能力、学習スタイル、学習ストラテジー、興味など)に配慮した指導一人ひとりの発達段階に配慮した指導・文脈化:ことばは文脈の中で意味が生まれ、談話の中でメッセージを伝える。学習者は場面や状況に応じてことばを理解し、流動する文脈の中で使用してはじめてことばを習得する。決して文型練習で得られるものではなく、意味のある文脈をいかに作れるかがポイント・統合化:子どもの言語発達では、子どもにとって「意味するもの」と「意味されるもの」を結びつける象徴機能の形成が言語発達の中核学習者の言いたいことや内容をことばにする(統合化する)とき、言語習得が進む。※子どもがペットの写真を持ってきて、「これ 私のペット」と言った場合、正に個別化文脈化統合化支援者のスキャフォールディング(足場かけ)が重要・漢字にルビ打ち ・やさしい表現 ・音読 ・板書 ・視覚的活動教材の提供 ・友達同士一緒に考える ・わかりやすいプリントを用意する など7.日本語指導に必要な観点1)こころを支える指導2)声が届く体験→自分のことばを聞いてくれる人がいる必要な視点①成長・発達の視点②ことばの力をみる視点③どのような「ことばの力」を育成するのかという視点第二言語としての日本語の特徴・動態性:常に日本語の力は変化している。・非均質性:場面や状況に応じて生起する日本語の力は同じではない。・相互作用性:日本語が使用される目的や相手との関係性によって日本語の力は異なっていく。JSLカリキュラムと教科指導JSLカリキュラムは、考え方を示したもの日本語の習得を通して学校での学習活動に参加するための力を育成するもの知的で楽しい活動これはなんだろう、これとこれはどう違うのか、なぜこうなるのか、考えてみよう 調べてみよう8.「移動する子ども」とは①空間的に移動する子ども②言語間を移動する子ども③言語教育カテゴリー(第二言語教育、外国語教育、継承語教育、母語教育など)の間を移動する子ども