通算第54号(2018年2月5日発行)毎月1回 随時発行(記事、論文引用:太文字) バックナンバーはURL:http://marugame-kodomo-nihongo.net/merumaga.html で閲覧できます。
【1】 今号のトピック
◆1月27日(土)のひろばは大盛況
昨年最終のひろばとなった12月16日(土)では、クリスマス会の前宣伝もあり、幼児を含め10名の参加があったものの、今年に入り1月6、13、20日は4名、2名、2名と低調だった。ところが27日は10名とまたまた大台を記録する結果となった。ボランティアは5名でてんやわんやに。フィリピンの親子も参加し、充実の1日となった。続く2月3日も8名となり、これからが楽しみ。
◆「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA」使い方」研修会に参加(12月23日(土)10~16 於:アイパル)続報(2)
外国籍等(日本国籍含む)児童生徒の日本語能力測定のツールとして開発されたDLAだが、私たちボランティアが活用するには、その内容の中身の広さ、深さ、判定における判断など多くの課題がありそうだ。ひろばでは、初めて参加する児童生徒には、ひろば独自の簡単なシートを使って、現在の日本語能力を把握しよ
うとしているのだが、これがその後に活かされることはあまりない。ひろばとして、個々の子どもたちの日本語能力をどうとらえ、どのように支援していくかについて議論することが必要だ。(以下、DLAの手順概略 -詳しくは、
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003/1345413.htm をぜひご覧ください。)
DLAが測定しようとする言語能力
「DLA」は、<はじめの一歩>(「導入会話」と「語彙力チェック」)と、<話す><読む><書く><聴く>の4 つの言語技能から構成される。DLA測定の前段階として「導入会話」で①CF(会話の流暢度)と「語彙力チェック」で②DLS(弁別的言語能力)を測定する。一定程度の日本語能力があると判定されれば,<話す><読む><書く><聴く>テストにより①CF②DLS③ALP(教科学習言語能力)を測定し、6段階のJSL評価をする。
6段階評価(ステージ1~6)に基づいて、日本語指導が必要な児童生徒の支援の段階が決まる。
・ステージ1~2 は、日本語による意思の疎通がむずかしく、サバイバル日本語の段階です。在籍学級での学習はほぼ不可能で、手厚い指導が必要です。
・ステージ3 は、単文の理解がむずかしく、発話にも誤用が多く見られるレベルです。クラス活動に部分的参加を始めつつ、個別的な指導をすることが必要です。
・ステージ4 は、日常生活に必要な基本的な日本語がわかり、自らも発話ができる段階です。話し言葉を通したクラス活動にはある程度参加できるレベルです。しかし、授業を理解して学習するには読み書きにおいて困難が見られ、個別的な指導が必要です。
・ステージ5~6 は、教科内容に関連した内容が理解できるようになり、授業にも興味をもって参加しようとするレベルです。読み書きにも抵抗感が少なく、自律的に学習しようとする態度が見られます。必要に応じて支援をしていくことが必要です。
「DLA」の進め方
・「DLA」の実施方法は「対話」を重視し、マンツーマン形式で行います。
・子ども一人あたりの所要時間は、45~50分以内で実施してください。
・一人あたりの所要時間の目安は、「はじめの一歩」は5分程、「話す」は15分程、「読む」は30分程、「書く」は40分程、「聴く」は15~20分です。
・どのテストを実施するかは、実施者が決めます。子どもの日本語力に応じて、適宜選択してください。
「DLA」の流れ
・観察による子どものステージが予測できない場合は、指導者あるいは実施者は、①「導入会話」②「語彙力チェック」によって子どものレベルを確認します。
④<話す>に進むか、⑤<読む>⑥<書く>⑦<聴く>に進むか判断してください。文字がわかるレベルであると判断された場合は、④を省略しても構いません。⑤⑥⑦の実施の順序は、子どもの日本語力に応じて柔軟に対応してください。
・1回の実施で全ての「DLA」を行うのは望ましくありません。数日に分けて実施することを心がけてください。なお、どのくらいの頻度で実施するかについてですが、指導や学習の成果を把握するために実施する場合は、半年に一度実施するのがよいでしょう。また、指導の在り方を検討するための情報を得るために実施する場合は、その都度実施することも可能です。
(以上『外国人児童生徒の総合的学習支援事業 外国人児童生徒のためのJSL 対話型アセスメント DLA』の第1章「対話型アセスメント(略称DLA)の概要」より抜粋)
◆今、外国人住民が置かれている現実(国籍編)(続報)
自分に向き合う-国籍、ルーツ、アイデンティティ あなたには「理解者」がいますか。
-日本とペルーの間を移動して-(宇都宮大学院生 小波津ホセ)
国籍とは特段の問題がなければ出生時に決定される。しかしながら、アイデンティティは成長過程の中で構築され、その人の土台となり強化されていく。このため、個人の中だけで形成されるものとは言いがたい。アイデンティティの形成に際して家庭、学校、地域などの生活環境の中での周囲の人々との関わりは大きな影響を及ぼし、だからこそ、そうした中での若者への配慮は重要だと考える。(中略)私自身のペルーと日本での経験から、アイデンティティとは移動する人にとって土台となるものであり、同時に壁でもあると考える。そして、アイデンティティの構築と壁の克服には「理解者」が必要になるが、ここでいう「理解者」とは同じ境遇を経験した人やいわゆるロールモデルとなる人である。振り返ると、理解者との出会い、そして自分自身と向き合った経験がアイデンティティの確立に大きな役割を果たしたと思う。 (Migrants Network195号23Pより抜粋)
【2】論文・新聞記事・行政機関の記者発表記事・その他情報
◆ 日系4世の就労制度を創設 日本語能力など条件に(毎日新聞 2018年1月9日)
法務省は今年度中に、ブラジルやペルーなど海外在住の日系4世の若者が日本で就労できる新たな在留制度を創設する。入国の際に一定の日本語能力を求め、1年ごとの更新で最長5年間在留できる。労働力不足の解消に利用される懸念もあることから、国内の親族やホストファミリーなどによる身元保証がある場合に限って在留資格を与える。
現行制度の日系人の受け入れは、3世と4世で大きく異なっている。3世までの日系人やその配偶者は「定住者」「日本人の配偶者等」の在留資格が得られ、就労も自由。4世は日本で定住する3世と生活する未成年の未婚の実子のみ「定住者」として入国できる。3世の扶養を受けることが前提となっているため、原則として就労はできない。新制度は、年間数千人規模の受け入れを想定。18~30歳の4世に「特定活動」の在留資格を与え、就労を自由にする。入国の際は日本語能力試験の「N4」(基本的な日本語を理解できるレベル)を求め、入国後も日本語のレベルアップを更新の要件とする。原則として、家族を連れてくることはできない。法務省は近く、1カ月程度の意見公募(パブリックコメント)の実施を予定している。
【3】編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4日(日)の朝、山手の我が家の周りは雪景色が出現。海沿いと山間部?では別世 界に。外国人住民にとって、国籍とアイデンティティを自分の意識の中で合致できるかが重要。
「日本社会はどれだけ彼らに居場所を提供し、かれらが自分たちの価値観で考え、行動することを認め、受け入れてきただろうか。」という前述の小波津ホセさんの言葉は日本人に重い課題。
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