2016.4第28号~2016.5第30号

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「まるがめにほんごひろば」メールマガジン             
~外国にルーツをもつ子どもたちとその保護者の学習支援等に向けて~ 
通算第28号(2016年4月27日発行)毎月1回月末及び随時発行予定    
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(お詫び)
前号で「多文化共生」を問い直す グローバル化時代の可能性と限界(日本経済評論社発行)について、
本書の概要を掲載するとしていましたが、紙面数を3ページ以内に収めるほうが、読者が読みやすいとの意見があり、次号通算29号を5月中旬に配信し、30号を続けて5月末に配信することにいたしました。お詫びいたします。
◆目次◆
【1】今号のトピック
◆平成28年度ひろば総会の開催について
◆香川まるがめ子どもにほんごひろばのホームページを開設しました。ぜひご覧ください。
◆今を生きる子ども・若者への平和メッセージⅡ~外国の子どもたちを通して、地域のつながりを考える~
【2】新聞記事・行政機関の記者発表記事・その他情報提供
◆県内の未就学数、高校進学率を推計する。(住民基本台帳の外国人人口から)
【3】自由書き込み欄
【4】編集後記
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【1】今号のトピック
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◆平成28年度ひろば総会の開催について
前号のメルマガでお知らせしましたが、開催日が近づいてきましたので、再度お知らせします。
今年度のひろばの総会は、下記の日程で開催します。総会終了後、小・中学校派遣の日本語学習支援者との意見交換会を行いますので、参加をご希望の方は、メールでご連絡ください。大勢の方の参加を期待しております。
と き 平成28年4月30日(土)9:30~11:00
ところ 丸亀市城乾コミュニティセンター2階大会議室
9:30 開 会 
    議長の選出
 議 事
第1号議案  規約の改正
第2号議案  役員の選任
第3号議案  事業報告
第4号議案  収支決算報告
第5号議案  事業計画
第6号議案  収支予算
10:00  「小・中学校派遣の日本語学習支援者との意見交換会」
・外国籍の派遣の方
・日本語サークル「わ」の会会員
・香川まるがめ子どもにほんごひろば会員
・その他の派遣の方
11:00  閉 会 (記念撮影)
※ 総会終了後 ポルトガル料理店「MU」に移動
11:30~  懇親会(昼食代 自己負担)
◆香川まるがめ子どもにほんごひろばのホームページを開設しました。ぜひご覧ください。
また、ご意見、掲載してほしい内容などをお寄せください。
URL:http://marugame-kodomo-nihongo.net
アップ内容:トピック(最新の外国人住民統計情報を掲載)・直近のまるがめ子どもにほんごひろばの開講状況 ・外国人住民関係統計(在留統計(総務省)・「外国人雇用状況」の届出状況まとめ・日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成26年度)・学校基本調査(香川県内の外国人児童生徒数(毎年5月1日現在)・これまでのひろばの記録・メールマガジン・研修会情報・研修会参加報告・書籍・論文の紹介・多文化データベース・ブログ
◆今を生きる子ども・若者への平和メッセージⅡ~外国の子どもたちを通して、地域のつながりを考える~
昨年11月23日(月・祝)に開催しました「今を生きる子ども・若者への平和メッセージ」の第2回目を行います。今回は、外国人住民に焦点をあて、外国の子どもたちを通して、地域のつながりを考えることを目的としています。多くのメルマガ読者の皆さんが参加されることを期待いたしております。参加希望者は、
メールください。
(内容)
1 趣 旨 
在留外国人の滞在期間の長期化に伴い、子どもを含めた家族の呼び寄せや日本で生まれる子どもの増加などにより、外国人住民とその子どもたちの数は年々増え続けています。現在、丸亀市の外国人住民の数は1,600人を超え、そして、そのうち100名近くの児童生徒が市内の小中学校に通っています。親たちは異国での日々の生活に苦闘し、子どもたちは、学校生活に早く適応しようと日々頑張っていますが、親子ともに、言語、文化、習慣などの違いなどから、将来の家族の生活や子どもの教育などに多くの問題を抱えています。
 このような中、私たち市民は、これまで外国の親たち、その子どもたちとどう向き合ってきたのでしょうか。そして、また、外国の方たちも、私たちとどう向き合ってきたのでしょうか。
今回、外国人住民をはじめ地域の住民、さらには外国人支援者などから、今の子どもたちが抱える問題などから見えてくる外国人住民の置かれている実情について、お話しをお聴きし、会場の皆さんと意見交換するこ
とを通じて、少しでもお互いを理解しあい、地域とつながることの大切さ、さらには共に生きる社会とはどうあるべきなのかを考える機会になることを願って開催します。
2 主 催  「外国人住民と地域のつながりを考える」実行委員会
(構成団体) あえの会、香川まるがめ子どもにほんごひろば、丸亀カトリック教会、丸亀ゲス
トハウス ウエルかめ、坂出カトリック教会、halqa-はるか、P.P.P.(ピアノ・ピ
ース・プロジェクト)、 (株)レベック  (五十音順)
3 後援申請  丸亀市、丸亀市教育委員会、丸亀市国際交流協会、(公財)香川県国際交
(予定)   流協会、(独)JICA四国、香川県ユニセフ協会、
4 開催日時 平成28年6月19日(日) 14:00~17:00
5 場 所 丸亀カトリック教会(丸亀市幸町2-6-28 Tel.0877-22-9620)
(教会のご厚意で会場を貸していただきました。)
  ※駐車場を設けていますが、台数に限りがあり、なるべく公共交通をご利用ください。
 6 参加料  無料
7 スケジュール  
14:00  オープニング (P.P.P.ジャンベーズ) 
14:05 開会あいさつ
14:10~16:00   座談会・全体意見交換会
   スピーカー予定者:外国人住民、地域住民、支援者など
(それぞれの自己紹介を行い、自らの立場から課題を提起する中、聴衆者と互いに意
見交換を行う。)
(スピーカーなどからの問いかけに応じるなどの形で、参加した外国人住民が自らのことを話し、それにスピーカー、聴衆者らが互いに意見を述べ合う。) 
16:00~17:00  懇親会
  (隣の会議室において、飲食をしながら、懇親する場を設けます。)
8 展示・販売
イベント開催中は、実行委員会メンバーによる各種展示・物品販売、フェアトレード
コーヒーの試飲、販売などがあります。
【2】新聞記事・行政機関の記者発表記事・その他情報
◆県内の高校進学率、未就学数を推計する。(住民基本台帳の外国人人口から)
外国籍の子どもの高校進学率は、公表していないのでわからないが、H27.1.1の住民基本台帳の外国人人口 15歳~17歳人口で推計すると、208人となり、これを高校在籍者数で割ると、なんと13%の進学率となる。(年度途中の中学入学、退学者などがカウントされておらず、また、学年間の差異が考慮されていないので、仮定値であるが。)誤差を考えても、20%しか高校に進学していない結果になる。
さらに、小中学校に通っていない未就学児は、同じくH27.1.1の住民基本台帳の外国人人口 6歳~14歳人口で推計すると、329人となり,小中学校在籍者数240人を引くと、89人がなんらかの事情で学校に行っていない。率にすると、27%もの高率である
【3】自由書き込み欄(このメールマガジンへの注文、ご意見をお寄せください。いただいたご意見などを踏まえ、みんなで意見を交換し、よりよいメールマガジンにしていきましょう。)                                   
【4】編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
新年度4月のひろばは、9日と23日に開講しました。参加児童は、それぞれ7名、4名でした。出足は必ずしも好調とはいえませんが、第2・第4土曜日の開講が早く定着するよう、これまで参加した児童への継続参加を積極的に呼びかけたいと思っています。
ひろばのホームページを開設しました。素人の手作りホームページですので、見やすさやわかりやすさなどの点で決して満足できるものではありません。今後とも、皆さん読者のご意見をお待ちしております。
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▼「まるがめにほんごひろば」への学習サポーター申し出及びメールマガジンの配信を希望される方は、随時申込を受け付けていますので、お気軽にご連絡ください!
■編集・発行 香川まるがめ子どもにほんごひろば事務局 文責:安藤 
〒761-2408 
高松市丸亀市綾歌町富熊5034-14
TEL:080-3921-9414 FAX:0877-86-6328
E-mail: qzp10324@gmail.com
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「まるがめにほんごひろば」メールマガジン             
~外国にルーツをもつ子どもたちとその保護者の学習支援等に向けて~ 
通算第29号(2016年5月16日発行)毎月1回月末及び随時発行予定    
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◆目次◆
【1】今号のトピック
◆平成28年度ひろば総会終了後に開催した「小・中学校派遣の日本語学習支援者との意見交換会」について
【2】研修会・講演会・論文情報
◆「多文化共生」を問い直す グローバル化時代の可能性と限界(日本経済評論社発行)
【3】自由書き込み欄
【4】編集後記
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【1】今号のトピック
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◆平成28年度ひろば総会終了後に開催した「小・中学校派遣の日本語学習支援者との意見交換会」について
4月30日のひろば総会は、9:30から出席者13名(会員7名、学校派遣者5名、来賓1名:アイパル香川)で開催。予定した議案をすべて承認して閉会となった。総会終了後、10:15 から「小・中学校派遣の日本語学習支援者との意見交換会」を行った。スピーカーとして、中国籍の派遣の方、日本語サークル「わ」の会会員2名、「たにこ」会員、香川まるがめ子どもにほんごひろば会員の5名がスピーカーとなり、学校現場の実情、子どもたちの事情などを中心に、ひろば会員との意見交換を行った。
前もって、5名のスピーカーから、それぞれの活動状況をお聞きした内容を模造紙に表にして張り出し、それを参加者が見ながら、お互いに理解できるように議論を進めた。
5名の学校派遣支援者の活動概要は、4市2町の小中学校に派遣、国籍は、中国、フィリピン、ペルー、パキスタン、ネパールの5か国の19名の小中学生。取り出し4、入り込み2、放課後指導2、国際教室1の比率で指導を行っている。
 まず、スピーカーから、子どもたちとの学習方法、その内容が話された。以下は個別の発言内容。
○低学年は、取り出し、高学年は主に放課後別室で行っている。
○日本語ゼロの低学年には、学校での学習用語をどうやって入れていくかが問題。
○子ども、親、担任、校長、支援者の間で共有する情報として「交換日誌」を利用。子どもとの1対1の交換ノートをつくり、担任のコメントをもらっている。そして、小学校から中学校にあがるとき、この交換ノートをもっていってもらっている。
○子どもとは、馴染んでもらうことが長くできなく、困った。
○中学生には作文力(漢字、文章力)強化のためノート(日誌)を利用。
○日本語を学習することに興味が薄い子どもには、その子が剣道部に入っていることから、「日本語を学ぶことは剣道の防御、母語は剣、英語などの他の言語を学ぶことは、コテなどの多様な技」と教えている。
(議論の内容)
○日本語ゼロの子どもには母語の通訳の重要度は高い。子どもの悩みを直接受け取れる役割が必要。
○担任は、外国籍の子どもとのコミュニケーションがとれず困っており、私が入ることで助かっている。
○我々支援者の役目は先生から子どもへの情報伝達の手伝い(先生への助力)ではなく、あくまでも子どもに対する日本語理解への助力である。
○初期指導では、母語での指導が効果的な時もあるが、できるだけ早期に日本語での指導を行うべき。そのタイミングが重要。言語対応ができない子どもの場合、最初の1か月に何をするのかは非常に重要。
そのためには、市町教委に、コーディネータする人が必ず必要である。
○外国の方の支援者は、日本の学校文化があまりわからず、担任がこの授業で何をしようとしているのか、何をわかってもらおうとしているのかを理解したうえで、子どもに母語で伝えることが必要だが、それは非常に難しいのではないか。
○母国を離れ、日本で学習するに際し、どういう助けがいるのか。ストレスも高く、つらい時期を乗り越える力をもてるよう、信頼関係を築き、手助けしたい。
○県、市町教委、アイパルからの依頼がないと、学校にはいけない。気になる子どもがいるのに、依頼がこない。
○学校での支援者への対応に差がある。ホワイトボードに支援者の来校を他の先生に知らせる学校もある。
○子ども個々の個性もある。ニーズの汲み上げが大切。
(まとめ)
○支援者は、子どものバックグラウンドを事前に教えてもらうことが少なく、支援する中で、徐々に理解し、
子どもの個性もあり、互いの信頼関係を築くのに苦労している様子がよくわかった。
○母語支援者と日本語支援者は、相互に補完すべきだが、予算の関係から、そうできているところは少ない。
○校長、教頭、担任とのコミュニケーションが大切だが、支援者だけの努力では難しい。
○支援する時間も少なく、この限られた時間の中で、いったい何ができるのか、悩みも多い。
○高校進学のことを考えると、もっと幅広い議論の中で、問題を解決していくことが求められる。
【2】研修会・講演会・論文情報
◆「多文化共生」を問い直す グローバル化時代の可能性と限界(日本経済評論社発行)編著 権五定・斉藤文彦
・「共生」の用語は、もともと生物学の用語 異なる生命の共存 symbiosis(シンビオシス)※イソギンチャクとクマノミ。グロバリゼーション ヒト、モノ、カネ、情報が国境を越えて移動する中、社会学に移入した。特にヒトの移動 移民問題 国民国家が揺さぶられる。
・一つの国家の中に、いろいろな民族が存在し、多文化化(multi-culturalism)。国家という境界に文化の境界があわなくなった。
・日本語の「共生」の訳語:symbiosis や co-existence 、conviviality、living together
・ 仏教用語の「共生」(ぐしょう)縁起:1つの命は他の多くの命に支えられている。浄土宗 「ともいき」
運動「共生極楽仏道:ともに極楽に生じ仏道を成さん」
・阪神淡路大震災:被災した8万人の外国人への支援の在り方が問われた。多文化共生センターの発足
・黒川紀章:対立関係を解決するためには、二項対立的な関係ではなく、対立を含んだまま共生する理論の必要性。
・将来の仏教が語るべき共生の思想の視座と方向性:「きょうせい」(symbiosis)という異なった集団と集団の間の共生の視点と、「ともいき」(conviviality)という個人と個人あるいは個人と集団の共生の視点の間に、避けがたく存在する対立、関係、緊張関係の視点を、一方で見失うことのない共生観」
・近代思想と共生の在り方 共生を国家関係ではなく、文化と文化の関係で理解
・「共生」概念の「生」の概念を取り上げ、権力構造のもと、意味ある「生」をもつためには主体性の確保が不可欠、主体性確保のための意識の在り方、意識的取り組みの必要性
・西ドイツ時代の対外文化政策の問題点:「いつかは帰国する外国人」
・韓国の多文化教育:韓国のアイデンティティ強化の発想
・アメリカの多文化教育:9.11以降の逆行 社会としての制度的な改革の実践の必要性
・色濃く横たわる先進国と途上国の格差問題 貧困と環境問題、先進は途上国を踏み台にして現在の豊かさを手に入れた。倫理的にも先進国の正義への要請
・長期的には、物質消費に依存しないライフスタイルとそのような生活に幸せを感じる新たな価値観の創造が欠かせない。
・なぜ、異なる文化や民族が互いに受け入れあるべきなのか。この問いは、平和概念と緊密に絡まっており、なぜ、共生しなければならないのかと同様に、なぜ、戦争や物理的な暴力はさけなければならないのかとの問いが存在する。いかなる悪が生み出されたとしても、それは必要悪であり、それ以上の善の創出がみこまれるのであれば、その悪、戦争もまた肯定されるという理屈で一蹴される。
・フランスの哲学者フーコー:近代の支配構造としての統治性の概念:人々は、国家の発展のために、生産性を高める道具と化し、支配される側がその支配の仕組みを受け入れる。人々は、画一化され、個々の特殊性が抽象的な普遍性へと移し替えられる。全体主義、ナチズム、ホロコーストは、生産性の向上の論理が、生産に役に立たない人々に対する抑圧をもたらす。支配される側がその支配の仕組みを受け入れれば、国家は安定するが、思いもよらない暴走の危険性をもつ。異なる価値観や生活習慣を背景とする多文化の存在それ自体が、画一化した社会による暴走を防ぐ可能性をもっている。多文化間の共生は、社会の暴走やホロコーストのような悪を抑圧するという意味で正義なのである。多文化共生は余裕のある人々による寛容さを基盤としたリベラルな言説などではなく、社会における公共性を担保するための厳格な政治的欲求であり、余裕の有無を問わない社会全体を貫徹すべき規範として位置づける必要がある。
・「多文化共生でいう「文化間の差異」について、マジョリティがすでにイメージを決めており、マジョリティによりイメージされた「異文化」を体現することをマイノリティが要求されている。」という。
・「共生」は、共に生きることを意味するが、問題はその「生」がどのような生の様式を意味しているかが問題である。市民としての「生」(マジョリティ側の生)が労働者としての「生」(マイノリティ側の生、文化の商品化を通した市場経済への参加という形のみでしか認められない生)を押し付けている。
・「共生」における「生」もまたすでに「善き生」(※マジョリティ側のいう「生」)として語り手によって一方的に語られ固定化されるものであるならば、それは「共生」でなく、「強制された生」である。本来の意味での「共生」は、一元化された「自己」と「他者」の解体という方法以外に達成することは不可能であろう。すなわち、恵まれた人々が市民としての生を享受し、他方で虐げられた人々が労働者としての生(文化の商品化を通した市場経済への参加という形のみでしか認められない生)しか生きることができない現状は倫理的にも望ましくない。それに代わってマジョリティ側の生とマイノリティ側の生との両方をすべての人々が体現するようにならない限り、「自己」は「他者」の「善き生」を定義し続けてしまうのである。そして、それは結局のところ「自己」による「他者」の支配を正当化することに他ならない。
・南米日系人:ガラスコップのシステム:経済危機以降の南米日系人の日本での生活や就労は、彼ら、彼女らを雇用する業務請負業者に依存した脆弱な生活をガラスコップに入れられた状態であると比喩に使われた。経済危機以降は、その影響を受け失業者や生活困窮者が増加する中で、脆くも成り立たなくなった。日本に残ることを選択した南米日系人が自分たちの環境を少しでも良くしようとする新たな動きが生まれたことは、今後の日本における「多文化共生」を考えるうえで、重要なターニングポイントになると注視している。
・マイノリティに対する政策だけでなく、当該社会のマジョリティからの支援や共感を得ることができる政策とそのための教育の重要性。その際、多様性の拡大(人種や民族だけでなく、ジェンダーや性的指向、宗教などさまざまな多様性を考慮に入れることで、多様性の意味が拡大する。そのことで、マイノリティからの異議申し立ての力を減じるという議論がある。)を危惧したり、選択的移民政策を全否定するような理想主義的な理念に偏るのではなく、マジョリティが抱く脅威感や負担への懸念を可能な限り取り除いた具体的政策の提示が求められる。
・実際に当該社会のマイノリティと個人的な関係を持つ機会を提供し、実際の個々人による交流の体験や当該社会でのマイノリティの歴史を重視した教育、平等と共に衡平を求める教育を提供する。
・共生をめぐる考察の1つとして、先進国と途上国の間に横たわる格差のうち、貧困と環境という2つの問題を取り上げる。先進国の発展は、途上国の資源を利用してきたことによってもたらされてきた。一方、途上国は、先進国が多大なエネルギーや物質を消費することによって生じた各種のしわ寄せを負わされている。
貧困にせよ、気候変動にせよ、途上国の自己責任を超えたところで問題は発生しているにもかかわらず、途上国の人々は負の帰結を負わされている。この非対称性は重要な倫理の問題を提起する。それゆえ、現状を是正し、より公平な姿に戻すという正義の要請がそこから生まれてくる。
・貧困にしても気候変動にしても、地球規模の問題を解決するためには、先進国の人々にかなりの負担が強いられ、今の快適な生活を手放すことが求められる。そのような犠牲の先に見える新しいライフスタイルが今より魅力的に見えなければ、今の今の生き方より望ましい生き方への転換は困難であろう。それは、地球規模の物質循環に見合った責任ある消費を体現するようなライフスタイルであろう。あり余るモノに囲まれるよりは、創造 性など人間本来の生き方を発揮するために本当に必要な財に囲まれた生活であろう。そこで望まれる社会は男女平等等を含む社会的公平が確保された社会である。人間の尊厳が守られ、災害などの非常時にも社会的弱者が泣き寝入りを強いられることがない、すべての生命に優しい社会であろう。そのような社会では、政治的に無力な者こそ強い保護が与えられるべきことを要請する人権理念が要請される。
【3】自由書き込み欄(このメールマガジンへの注文、ご意見をお寄せください。いただいたご意見などを踏まえ、みんなで意見を交換し、よりよいメールマガジンにしていきましょう。) 

【4】編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
インターネットの不具合があり、16日の送信が遅れてしました。ひろば総会後の小・中学校派遣の日本語学習支援者との意見交換会は大変有意義であったと思う。これらの意見を支援者間で共有し、教委や学校現場に伝える中で、今の状況が少しでもよくなればと思う。
「多文化共生を問い直す」の論文の要約は難しい。こちらの考えで要約すると、意味が変わることにもなる。できるだけ、原文を記した関係で、難解、意味が分からず、長文になったきらいがあること、ご容赦ください。
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■編集・発行 香川まるがめ子どもにほんごひろば事務局 文責:安藤 
〒761-2408 
高松市丸亀市綾歌町富熊5034-14
TEL:080-3921-9414 FAX:0877-86-6328
E-mail: qzp10324@gmail.com
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「まるがめにほんごひろば」メールマガジン             
~外国にルーツをもつ子どもたちとその保護者の学習支援等に向けて~ 
通算第30号(2016年5月31日発行)毎月1回月末及び随時発行予定    
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◆目次◆
【1】今号のトピック
◆6月19日(日)開催の「今を生きる子ども・若者への平和メッセージⅡ ~外国の子どもたちを通して、地域のつながりを考える~ の意図するもの
◆丸亀市東中学校、城乾小学校の運動会を見学してきました。
【2】研修会・講演会・論文情報
◆「多文化共生」は可能か?― 移民社会と異文化間教育 ― 馬渕 仁(大阪女学院大学)
【3】新聞記事・行政機関の記者発表記事・その他情報提供
◆外国人定住へ環境整備(5.18日本経済新聞)
【4】自由書き込み欄
【5】編集後記
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【1】今号のトピック
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◆6月19日(日)開催の「今を生きる子ども・若者への平和メッセージⅡ ~外国の子どもたちを通して、地域のつながりを考える~ の意図するもの
○今回の集まりでは、丸亀市内の企業に就職している外国籍青年(ペルー、フィリピン、中国、インドネシア 4名)から、子ども時代の学校生活などを回想してもらい、その当時、日本人について感じていたことや学校での授業や生活で感じていたことなどを話してもらうことを通じて、受け入れ国である日本社会の問題点を浮き彫りにすることにある。そのことをわたしたち市民がみずからの問題として向き合うことができるのか、どうすれば、同じ地域住民として考えることができるのか、さらにその解決に近づける取り組みが可能なのかどうかなど、市民目線で意見交換できればと考えている。
・そのためには、これら子どもたちの抱えているさまざまな事情をどうイメージしていけるのかが重要である。
・さらに、今後、日本で生活するであろう子どもたち、成人になる彼ら彼女たちが、どのようにしたら、自己肯定感を持ちつつ、自己実現を目指し、日本社会の中でしっかり根をおろした生活を築いていけるのか、参加者みんなで考えていければと思う。
◆丸亀市東中学校、城乾小学校の運動会を見学してきました。
まるがめにほんごひろばの子どもたちの様子を見たくて、中学校には、南米の研修生2名と、小学校にはひろばの簗瀬さんとお邪魔した。中学校は、各学年の生徒が控える場所に通じる通路には、柵を設け、PTAの役員が監視しており、容易には近づけないようにしてあった。そのため、子どもたちに声をかけることができたのは、1人のみという残念な結果に終わった。でも、ペルーの母親と話すことはできたのはよかった。それに反し、小学校では、各学年のテントには自由に近づけることができ、多くの子どもたちに話しかけることができた。4名の母親とも会えたし、校長先生にもあいさつしました。子どもたちの徒競走では、それぞれ頑張っている姿がとても印象的でした。今後も、このような機会を通じて、保護者との交流が少しでもできればと思った。
【2】研修会・講演会・論文情報
◆「多文化共生」は可能か?― 移民社会と異文化間教育 ― 馬渕 仁(大阪女学院大学)
※ネットでの概説文をそのまま掲載します。長文で難解な箇所もありますが、お読みくださいね。
 「多文化共生」は、昨今、概念的にも実際の場でも、ある意味でインフレ現象を起こすほど社会に浸透しつつあるといえよう。しかし本当の意味で共生が実現しているかとなると、共生概念の曖昧さと相まって、社会構造的な状況はなかなか変わらないままに展開しているというのが実状であろう※。そうした問題意識の下、現代の喫緊の課題のひとつである「移民」※※に焦点を当てて、本年度の特定課題研究は、敢えて「多文化共生は可能か?」という問いをテーマにした。多様なディシプリンを包含する「異文化間教育学会」の研究領域を活かし、他では個々に論じられるような問題について、一定の課題意識をもった異なる分野の研究者によって、それぞれの分野からの分析を可能な限り批判的に行なうことを試みたのである。
公開研究会を含み、準備の段階で検討を重ねた「課題」には次のようなものがあった。その第一は、前年の特定課題研究からの宿題でもある「制度化と標準化の相克」の問題である。昨年度の課題研究では、「従来の異文化間教育学会や関連する学会での取り組みに、一部の欧米諸国や韓国などと比べた場合、政策提言の視点が希薄である」こと、また、「多文化共生が喧伝される割には、その理念に基づく実際のカリキュラム開発がほとんどなされていない」という問題点が指摘された。いずれも、これまでの取り組みの課題を指摘したものであろう。しかし一方では、「そうした政策や統一性のあるカリキュラムが標準化という問題を引き起こしてしまい、マイノリティの個々のコンテキストにおける問題を押し隠してしまう」という課題も指摘されたのだった。それは、従来から議論のあった、トップダウンとボトムアップというアプローチ上の問題とも重なる課題である。今回の3名の発題者には、それぞれの分野から、この点への考察を深化させることが期待される。
第二の課題は、いわゆるニューカマーとオールドカマーをめぐる異同の問題である。多文化共生が議論される際、1990年代以前から日本に住む、例えば在日コリアンと呼ばれる人々の存在が看過されている、或いは「共生」言説に安易に包摂されているのではないかとの指摘がある。一方、ニューカマーと従来からの在日コリアンとの課題の共通性や活動の連帯性を見出そうとする模索も試みられている。さらに、在日コリアンについて言えば、3世や4世と呼ばれる人たちが増え始め、同時にニューカマーとも呼び得るコリアンも出現しつつある。ニューカマーとオールドカマーの異同を認識するとともに、多様化する外国人居住者を横断する共通性、連続性を見出す可能性やその意義について、試論を提示できればと思う。
第三の課題は、マジョリティとマイノリティにおける当事者性の共有についてである。痛みや怒りを経験しないマジョリティが、いわゆる当事者性に鋭敏になれるためにはどうすればよいのであろうか。よく説かれるのは、マイノリティに関わる問題はマイノリティのみの問題ではなく、マジョリティにとっても問題であるということへの覚醒を喚起することである。しかし、それをいわば「お説教」として示しても実効性は乏しい。では、どのようなストラテジーが考えられるのだろうか。例えば、地域社会における制度的なインフラの整備がなされないまま、教える立場と教えられる立場がはっきり分かれてきた日本語教育における試みを振り返ることは、考察への手がかりになり得るかもしれない。時には圧倒的多数者であり、力関係の差異が歴然としているマジョリティへの働きかけは困難な課題であるだけに、問題解決の糸口への模索は続けられなくてはならないと考える。
第四は、こうした問題を国内の枠組のみで考えるのではなく、同様の課題にさまざまな試行錯誤を繰り返してきた、日本以外の国々から学ぶべき点はないかという点である。多文化共生の理念的枠組は、英語圏諸国で1970年代以降に議論されてきた多文化主義に拠るところが大きい。カナダ・オーストラリア・アメリカ合衆国などでは、既に、実に多様な取り組みや葛藤の経緯が蓄積されており、その知見なしに国内の事象が議論されるとすれば、それは非常に残念なことである。しかし同時に、それらの国々では、新自由主義的政策の下、例えば多文化教育への予算やスタッフの削減といった、多文化主義政策への逆風が吹いているのも事実である。言い換えると、これまでのどちらかというと差異を重要視するアプローチに代わって、統一性を重んじる政策への転換が進んでいるのである。
近年取り上げられることの多くなったシティズンシップ教育は、まさにそうした流れのなかで捉えるべき、顕著な具体例かもしれない。そこでは、多様性をどうマネージメントするのかという視点が強く打ち出される。また、移民かそうでないかということより、経済力があるかないかが重要となり、「文化」の問題から、経済・政治的格差の問題への視点の転換をどう図り得るかが課題となる。確かに、「同じ法律に従って生きる存在として、どうしたらうまくやっていけるのか」が重要な課題であるとの認識は必要であろう。一方、シティズンシップ教育には、規範意識、社会的マナー、公共心などの高揚を指向する傾向が拭えない。社会における合意形成の過程へ、すべての人を充分に参加させることを狙ったシティズンシップ教育が、社会的規範を育てることに、より傾斜してしまう危険性については、どのように対応すべきなのであろうか。包括的アプローチのもと、「市民の育成」といいながら、国籍に市民が結び付けられてしまうと、結局は「国民の育成」と同義になるシティズンシップ教育の世界的な流布に対して、我々なりに応答する必要があろう。
このように振り返ってみると、国内における多文化共生の捉え方には、いくつかの傾向があることも見えてくる。そのひとつは、格差や対立、そして葛藤という内実をはらんだ共生への議論が少ないことである。具体的には、外国人とは交流するが、在日コリアンとの交流には消極的であるといった態度などに、それはあらわれてくる。結局、共生とは「仲良くしましょう」の言い換えに止まってしまう現実である。一方、経済界や政策立案者の一部には、生産者としても消費者としても、社会に充分参加できないマイノリティの存在は国家や企業に益しない、という観点からの多文化共生論も盛んである。後者のアプローチに拠る場合は、そこで言われる「社会参加」とは何のための、だれのための社会参加なのかという点に充分に注意しなくてはならない。異文化間教育学会でも、「多文化共生」を論じるに際し、これらの点について掘り下げた議論を展開することは焦眉の課題であろう。
 先述したように、一部の地域や関係する人たちの間を除き、圧倒的多数のマジョリティの間では、こうした議論すらほとんどなされていないのが実情であろう。そのような中で、研究者の個々の取り組みをどのようにつなげ、共有していけるのかは、これからの大きな課題だと思われる。自らの立ち位置をいかにして自省的に問い直せるか、それに教育がどのように関われるかという大きな課題に、具体性のある提言で応答していくことが求められる。今回の特定課題研究が、そうした試みへの一つの契機となることを願うものである。
※ 「多文化共生をどう捉えるか」をまず定義してから、議論をすすめることが当然考えられるが、ここでは敢えてそうしたアプローチは採らない。その多義性を検討することが、本課題研究の目的の一つでもあり、また、そうした検討の結果が「多文化共生」の内実を明確化することにつながると考えるからである。
※※ 経済的理由により永住する外国人移住者か或いはそうではない人々なのか、さらに、ニューカマーとオールドカマーの異同など、「移民」の捉え方に関してもさまざまな議論が考えられるが、本課題研究では「ある国から他の国へ移り住む者」の意味で暫定的に広く捉えていることを断っておきたい。
【3】新聞記事・行政機関の記者発表記事・その他情報提供
◆外国人定住へ環境整備(5.18日本経済新聞)
政府は日本で働く外国人やその家族の定住を促すため、包括的な環境改善策を打ち出す。医療専門の通訳が常駐する病院を2016年度中に倍増。ビザの申請や更新の手続きもネットで完結できるようにする。外国人が生活やビジネスをしやすい環境を整え、対日投資の拡大をめざす。
(主な改善策)
▼(生活)
・受け入れ体制の整った病院 20か所 → 40か所
・外国人児童への日本語専門教員数の増 カバー率約80% → 100%
・病院や銀行などの情報提供 ジェトロのホームページで公表へ
▼(労働・就職)      
・労働者のビザ申請・更新 ネットで完結できるように
・経営者などへの永住権取得 必要な滞在年数を大幅短縮
・インターンシップ経験の留学生の日本での就職   ビザ申請で優遇措置
・留学生向けの企業説明会の開催   就職率30% → 50%
▼(企業の進出・起業)  
・日本の法令の英訳版の整備  500 → 1000
・行政手続きの削減 1年以内に対象を限定
・起業手続き 登記・税務処理も1か所で
※上記のうち、外国人児童への日本語専門教員数を増やすことで、カバー率を約80%から100%にするとあるが、2020年までに、日本語指導が必要な児童生徒約3万人全員に日本語指導を行うことなのか。現在80%
の児童生徒が日本語指導を受けているとあるが、香川県のように、年間24時間の非常勤特別教員をもって、カバーしていると考えているのか、大いに疑問である。また、そのために、一体何人の日本語専門の教員を確保しようとしているのか不明である。今後、調査したい。
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【5】編集後記━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   5月の第4土曜日28日が丸亀市立小学校の運動会であることを、14日のひろばにやってきた子どもたちから聞かされた。そのため、急遽ひろば開講を14日に変更した。各小学校には、変更のお知らせを作成し、子どもたちに配っていただいた。しかし、14日も中学校の運動会であり、子どもたちの兄姉や親せきの子どもが中学生である子らは、出席せず、3名の参加に終わった。
   また、良い情報もあった。丸亀市の広報誌にボランティア募集を掲載したところ、2名の女性から問い合わせがあった。2名の方が、今後、ひろばに参加されることを大いに期待したいものです。
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